投稿記事

「現代林業」2018年1月号 48、49ページ

 上伊那林業士会という会がありまして、その会長をしています。その会で継続してやっている実習がありまして、その事について掲載された記事です。

タイトル;「地元高校生を対象としたチェーンソー伐倒実習」 
                       長野県 上伊那林業士会

各地域のリーダー 長野県林業士会
上伊那林業士会(以下、当会)は、長野県林業士で組織されています。長野県林業士とは長野県独自の制度で、主に各地域のリーダーとしての活躍を期待されている存在です。年齢や職業、職歴など様々ですし、必ずしも林業専業者という訳ではありませんが、何らかの形で林業に関係している人たちです。
 当会では、全林研の「多様な担い手育成事業」を活用して、地域の高校生への後継者育成活動を行っています。対象は、地域にある上伊那農業高校の緑地創造科の2年生です。平成17年より継続して開催中で、参加した生徒数は延べ440人となりました。過去10年間の林業関連先への進学と就職は29名で、内訳は、森林系大学への進学が14名、林業大学校への進学が13名、森林組合等への就職が2名となっています。延べ人数400人に対して、約7%の学生が林業関連先を選択しているので、この活動が高校生の関心を高める助けになっていると思います。
 上伊那農業高校は、かつて林業が盛んだった頃には林学科があったのですが、林業の低迷に伴い、今では土木、造園、環境系の科に変わっています。そして学習内容も変わり、もはや林業実習が無くなりつつあるのが現状です。その部分を本活動が補うという意義もあります。

講師を務めた会員一同

ヒノキの造材の様子

2日間の実習で変わる生徒たち
 後継者育成活動として行うのが、2日間連続の山での実習で、当会の会員が講師を務めます。実習の目標は、チェーンソーが扱えるようになること、安全確実な伐倒が出来るようになること、メンテナンスが出来るようになること、などです。
 実習のポイントは二つあります。一つ目は、2日間丸々を実習にあてている点です。この2日間は山に入ってじっくり講習をします。実際に高校生に話を聞いてみると、すぐ近くに山があるにも関わらず、山に入ったことがない生徒ばかりです。関心も無いので、意識の中に山の存在は無いといっても過言ではありません。ですが、初めは「一体何をするの?」という表情だった生徒も、2日目になると顔つきが変わってきて、山で過ごすことで意識や取り組み方が変わってくる様子がよく分かります。
 二つ目は、少人数の班体制です。40人のクラスを8班編成にして、1班5人とし、各班を講師1名が担当して教えるという形をとっています。この形をとることで、一人一人に意識が向きますし、体験の時間も多く確保できます。
 講師たちは、まずは安全第一、さらに生徒に「参加してよかった!」と言ってもらえるような、質の高い実習になるように心がけています。 

講習終了後の集合写真

・林業の将来を担ってほしい
 実習終了後、生徒たちからは「山に入っての実体験ができて、勉強になった」「チェーンソーの扱い方やメンテナンスのやり方が分かった」「林業の意義や、間伐の効果が理解できた」「山仕事はおもしろいと思った」との感想をもらいました。
 この活動を通して山への関心を高めてもらい、将来の林業界を担う人材が出て来てくれることを期待していますし、その芽は徐々に育ってきているものと思います。
                     (まとめ/上伊那林業士会 会長 川島潤一)